青学大が新記録で最強王者・駒大を止めた!原監督「最高だね、君たち」1か月前のインフルエンザ集団感染を乗り越えて往路優勝
1区で荒巻朋熙(2年)が積極果敢な姿勢で首位の駒大と35秒差の9位と踏ん張ると、花の2区で黒田朝日(2年)が7人をゴボウ抜きして2位に浮上。2区で歴代4位、日本人歴代2位の1時間6分7秒の好記録で区間賞を獲得し、首位の駒大に22秒差まで迫った。3区で太田蒼生(3年)が日本人選手で初めて1時間の壁を突破する59分47秒の激走で駒大のスピードランナー佐藤圭汰(2年)を大逆転して首位浮上。前回の箱根駅伝4区から学生3大駅伝で23区間連続で首位を走り続けていた絶対王者の駒大をついに止めた。勢いに乗った青学大は4区の佐藤一世(4年)が区間賞の快走で首位をがっちりキープ。5区は前回、直前に体調不良を訴え、当日変更で出番がなくなった若林宏樹(3年)が、雨が降りしきる中、2年ぶりに天下の険を力強く駆け上がり、芦ノ湖のゴールにトップで飛び込んだ。
原晋監督(56)は「最高だね、君たち!」と選手を迎え入れた。
学生駅伝5連勝中の絶対王者、駒大に対し、原監督は「負けてたまるか!大作戦」を発令して今大会に挑んだ。実は昨年11月下旬から12月上旬にかけて、チームでインフルエンザに集団感染するトラブルがあったが、箱根路に向けた抜群の調整力で往路優勝を成し遂げた。
絶対王者の駒大にミスがあったわけではなく、むしろ、3区までほぼ完璧にレースを進めていた駒大を青学大が力業で破った。原監督が「駅伝男」と呼び、絶対の信頼を寄せる2区の黒田と3区の太田が抜群の勝負強さを見せつけた。
対する駒大の2区は1万メートル日本人学生歴代3位(27分30秒69)の鈴木芽吹主将(4年)、3区は1万メートル日本人学生歴代2位でU20(20歳未満)日本記録(27分28秒50)保持者の佐藤圭汰(2年)。1万メートルの持ちタイムでは黒田が28分15秒82、太田が28分20秒63と劣るが、20キロ超の箱根路では完勝した。鈴木、佐藤はいずれも区間2位の好走だった。青学大が誇る2人の「駅伝男」は、底知れぬ力を持っていた。
実は、黒田も太田も1か月前は大トラブルに見舞われていた。千葉県内で合宿中にチーム内でインフルエンザが流行。2人も感染してしまった。
「就任20年で、この時期にインフルエンザ集団感染なんて初めてですよ」と原監督は頭を抱えたが、すぐに次善策に切り替えた。インフルエンザに感染した選手を隔離した上で完全静養に努めた。
3日間は一歩も走ることなく、治療に専念。幸い、1週間後には練習を再開できた。
インフルエンザ感染に加え、さらにダメージを受けていたのが佐藤一世だった。昨年12月中旬に虫垂炎を発症。練習の中断期間はさらに延びた。原監督は「一世は起用できないかもしれない。起用できたとしても7区か8区かな」と漏らしたこともあった。
「負けてたまるか!大作戦」を思いついたのは、チーム状況がどん底の頃だった。「駒大は本当に強い。ひとつ、間違えると、レースの序盤で心を折られる。出場する選手、サポートする選手、マネジャー、スタッフがチーム一丸となって『負けてたまるか!』という強い気持ちで第100回箱根駅伝に挑みます。名付けて『負けてたまるか!大作戦』です」と高らかに宣言した。
「ここからが私の腕の見せ所ですよ」と原監督は、これまで成功してきた調整パターンを捨て、選手の体調をじっくり観察した上で練習をアレンジ。大一番に備えた。
12月下旬になると、各選手の調子がそろって急上昇。最も出遅れていた佐藤も超回復した。「心が折れそうになることもありましたけど、チームメートと一緒に乗り越えられた」と感慨深い表情で振り返った。
青学大はこれまで往路優勝した5回はすべて総合優勝を果たした。また、箱根駅伝を初制覇した2015年の第91回以降、2年連続で総合優勝を逃したこともない。この10年、箱根路の主役を張ってきた青学大が第100回大会で、その真骨頂を発揮している。